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「カイル」
声をかけられ、カイルは無言のまま顔を上げた。目の前にまだ温かい紙袋が突き出される。それが差し入れであることを察して、彼は僅かに口許を綻ばせた。
「何も外でやらなくてもいいだろう。風で書類が飛んだらどうする気だ?」
「綴じてるから平気。それに……」
言いかけたところで傍らに置いていた剣を掴み、書類束と一緒に渡したばかりの紙袋を押し付け、立ち上がる。鞘を残して駆け出した先には、今しがた船首によじ登ってきたくらげおとこが三体。それらを苦もなく斬り捨てて、カイルは何でもなかったような顔で戻ってきた。
「駆除と甲板の掃除は仕事」
それだけ言うと、今度はデッキブラシとバケツを手に取り、先ほどのモンスターの残骸の方へ行ってしまった。
考えたら、彼は船が碇泊するまで殆ど甲板にいる。そこで書類に目を通すのは彼なりに時間を有効活用しているのだろう。
もっとも――
「十四枚目から先、えらく綺麗だな……」
彼の文章の読解スピードが非常に遅いのも原因の一つである。
夕方、軍師の部屋から出てきたカイルはどことなくしょぼくれていた。
「どしたの?」
こちらの問いには何も言わずに首を振って答えただけだったが、付き合いが長いせいか大体想像がつく。
手許の報告書を軽く覗き込む。――案の定。
「――書き直し?」
今度は素直にこくりと頷いた。そのまま心なし影を濃くして自室の方へと戻っていく。
カイルの字はとにかく汚い。まるで小さな子供のような字を書くのである。一応これにも事情があり、現在矯正の真っ最中なのだが、そんな言い訳があの軍師に通用するわけもない。酷い時は四、五回書き直しを命じられる。それでも酒瓶で殴られることがないのは、字以外は完璧に仕事をこなしているからに他ならない。
故に、カイルの就寝時間はいつも遅い。
もっとも――
「もうちょっと速く書ければ早く寝られると思うんだけど……」
カイルの筆記スピードが非常に遅いことも原因の一つである。
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まさしく「やまなし、おちなし、いみなし」。実際完全な小ネタで作った代物です。
元々は設定変更後の4主の書き方練習なのですがね。殺陣描写、説明が極端に少ないのはそういう理由。むしろこれ殺陣とは絶対言わない。
ちなみに相手はケネスとジュエル。私の二周目の流刑メンバー。この二人が書きやすいせいもあります。
読み書きが遅いのは前に設定に載せた通り。事情に関してはちゃんと出来ているので余裕があれば上げる方針で。
ここ数年ギャグがほぼ全く書けなくなってるんです、私……。これも一応ギャグにする予定だったもの。書きたいんですけどね……。