風の向くまま
日常とかプレイ記とかまあ色々
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ラズリルの街の片隅に、小さな共同墓地がある。墓地と言っても数は少なく、中が空の墓も珍しくない。ここには海ではなく土に還ることを望む者が眠り、故人の名残を求める者が空の墓を造り己を慰めるのだ。
その一角を、カイルはゆっくりと歩いていた。まるで何かを探すように。
「カイル、こんな所で何してるの?」
声をかけられ、足を止めて視線を向ける。少し離れていた距離を詰めるようにキリルが足早に近づいてきた。後をついてきているらしいことは気づいていたが、特に話すようなこともないので気に留めずにおいたのだ。
「カイルがここに行くのが見えてさ。ケネスさんにも、夕方からはあんまり目離さないように言われてたし」
口実かどうかは捨て置いてもケネスがそう言ったのは真実だろう。二年前、最後に紋章を使った時からカイルの意識は決まったサイクルで紋章に引き込まれるようになったのだ。その間何一つ行動が取れず、当然少し離れた所にいたら戻ってくることも出来ない。派遣クエストを含めてカイルの生活に規制が多いのはそのためだ。
「誰かのお墓参りかい?」
キリルの言葉にカイルは首を横に振り、再び歩き始めた。
「確かめに、来たんだ」
「何を?」
その問いには答えず、やがて一つの小さな墓の前で屈み込んだ。
土埃に汚れた墓標から、ここに来る人のいないことが推測出来る。文字が潰れて読み難くなってしまったそれには主の名はなく、「292年4月 風の日 三十代男性」とだけ彫り込まれていた。どこの人間なのかはまったくわからない。
「……誰のお墓?」
「僕と一緒にラズリルに着いた人」
「えっ……!?」
「聞いてない?小さい頃にラズリルに流れ着いた。だから『海流』(カイル)」
キリルの動揺をよそに、カイルは淡々と言葉を紡ぎながら墓標を軽く撫でた。
本当の名も意味も、恐らく別にあるのだろう。この名とて、つけられた理由は海を流れてきたから、海流に乗って流されてきたから、そんなものだ。だが自分の名はこれで正しいと、そうカイルは思っていた。海と繋がる存在としてのこの名こそが自分を表すのだと。たとえ本当の名を教えられたところで、それを受け入れるには長い時間がかかるはずだ。知りもしないものなのだから。
「この人……名前って、わかるの?」
「知らない。着いた時にはもう死んでたって」
「覚えてないの?」
無言で再び首を横に振る。墓標を撫でていた手を引っ込め、先ほどよりは綺麗になったそれを眺めながらカイルはぽつりと呟いた。
「……聞きたかったのにな」
「何を?」
「あの人は誰だろうって」
キリルは怪訝そうな顔をしたが、カイルは気に留めなかった。
あの優しいオルゴールの音。解放を望まず、ただこちらを見つめるだけだったあの女性。
そして二年前、エルイールに攻め込む前夜に聞いたリノの話。
それら総ての答えを知るであろう人は決して語ることなく、目の前でこうして冷たく在るだけだ。ラズリルで誕生した「海流」と、それまでの「誰か」の境界として。
あくまで墓、ということだろうか。他人も同然の「誰か」の生を引き継ぐことなど出来ない。ならば「海流」である自分には、その「誰か」のものを知る資格はないということか。
「――キリル君、行こう」
「もういいの?」
「うん」
踵を返し、来た時とは打って変わって普段と同じ歩調で歩くカイルがそれを振り返ることはなかった。
その一角を、カイルはゆっくりと歩いていた。まるで何かを探すように。
「カイル、こんな所で何してるの?」
声をかけられ、足を止めて視線を向ける。少し離れていた距離を詰めるようにキリルが足早に近づいてきた。後をついてきているらしいことは気づいていたが、特に話すようなこともないので気に留めずにおいたのだ。
「カイルがここに行くのが見えてさ。ケネスさんにも、夕方からはあんまり目離さないように言われてたし」
口実かどうかは捨て置いてもケネスがそう言ったのは真実だろう。二年前、最後に紋章を使った時からカイルの意識は決まったサイクルで紋章に引き込まれるようになったのだ。その間何一つ行動が取れず、当然少し離れた所にいたら戻ってくることも出来ない。派遣クエストを含めてカイルの生活に規制が多いのはそのためだ。
「誰かのお墓参りかい?」
キリルの言葉にカイルは首を横に振り、再び歩き始めた。
「確かめに、来たんだ」
「何を?」
その問いには答えず、やがて一つの小さな墓の前で屈み込んだ。
土埃に汚れた墓標から、ここに来る人のいないことが推測出来る。文字が潰れて読み難くなってしまったそれには主の名はなく、「292年4月 風の日 三十代男性」とだけ彫り込まれていた。どこの人間なのかはまったくわからない。
「……誰のお墓?」
「僕と一緒にラズリルに着いた人」
「えっ……!?」
「聞いてない?小さい頃にラズリルに流れ着いた。だから『海流』(カイル)」
キリルの動揺をよそに、カイルは淡々と言葉を紡ぎながら墓標を軽く撫でた。
本当の名も意味も、恐らく別にあるのだろう。この名とて、つけられた理由は海を流れてきたから、海流に乗って流されてきたから、そんなものだ。だが自分の名はこれで正しいと、そうカイルは思っていた。海と繋がる存在としてのこの名こそが自分を表すのだと。たとえ本当の名を教えられたところで、それを受け入れるには長い時間がかかるはずだ。知りもしないものなのだから。
「この人……名前って、わかるの?」
「知らない。着いた時にはもう死んでたって」
「覚えてないの?」
無言で再び首を横に振る。墓標を撫でていた手を引っ込め、先ほどよりは綺麗になったそれを眺めながらカイルはぽつりと呟いた。
「……聞きたかったのにな」
「何を?」
「あの人は誰だろうって」
キリルは怪訝そうな顔をしたが、カイルは気に留めなかった。
あの優しいオルゴールの音。解放を望まず、ただこちらを見つめるだけだったあの女性。
そして二年前、エルイールに攻め込む前夜に聞いたリノの話。
それら総ての答えを知るであろう人は決して語ることなく、目の前でこうして冷たく在るだけだ。ラズリルで誕生した「海流」と、それまでの「誰か」の境界として。
あくまで墓、ということだろうか。他人も同然の「誰か」の生を引き継ぐことなど出来ない。ならば「海流」である自分には、その「誰か」のものを知る資格はないということか。
「――キリル君、行こう」
「もういいの?」
「うん」
踵を返し、来た時とは打って変わって普段と同じ歩調で歩くカイルがそれを振り返ることはなかった。
なまじカイル君があまり喋らないので、彼単品で話を作るとどうしてもツッコミ役か会話誘導役が必要になります。今回はキリル君。当初は騎士団ズの予定でしたが、台詞数が激増して収拾がつけにくいのと、4決戦前夜のリノさんの話も多少は反映させたかったので。大体グラスカ到着前だと思ってください。そこまで進めるとリノさん入ってきちゃうので。
誰の墓だとか突っ込まないで下さい。私自身名前なんか決めてません。
実はー……ある日4主がどうやってラズリルまで来たか、という話がぽこっと出まして。オベルの王子様の場合、ラプソでの航海日数を見てもかなり離れてるんで普通死ぬだろ、と。
兄「板切れビート板代わりにして根性で泳いできた」
私「いや、普通に考えてありえないから。幾つだと思ってんだよ」
兄「まあ完璧ギャグだけど。じゃあオベルの兵士が庇って一緒に流された」
私「それだあああっ!!」
……とまあ、こんな会話が。
私、楊家将読んでから武人大好きです。それ以前でも1のアイン・ジードとか2のキバ将軍とか大好き。
ちょっとこんな……武人の鑑みたいな兵士格好良すぎじゃないですか!
というわけで、ドツボにハマってネタ作成。カイル君において設定採用。グッジョブ兄君。
日付も年号はともかく、年齢共々でっち上げ。ラズリルに着いた段階で服もボロボロで出身がわからなかったんじゃないかな、と。
結局その人のお墓を通して名前も知らないかつての自分との決別、みたいな話になってしまいました。無論、それを引きずってるのはカイル君に限らず4主自体にありえなさそうですが。公式で「自分」ってものがしっかり出来てそうですしね。カイル君微妙ですが。
王妃様に関しては今までの紋章に食われた人と違うので(団長もですが結末が完全に違うので)それなりに気に留めてほしいな、という願望です。オベル王家女性の正装って4主は見てないはずですから、リノさんに言われるまでは知らないのではないか、という設定にしてます。そしてやたら思わせぶりなリノさんのあの話。さすがに気にするだろうと。
この設定だとその両方に確実な答えを出せるのはお亡くなりになったこの人だけなんですよね。それでせめて出身地でも書いてはいないかと見に来た、というところでしょうか。カイル君主体にすると説明不足な感がどうしても拭えない……。
後はラプソでのカイル君の設定が出ちゃってますね。ラプソでの加入レベルにコンバートデータが反映されない補足みたいな感じです。本気で戦わないのではなく本気が出せない、ということで。まあ、コンバートデータが反映されたら凄いことになってしまうのですがね。
……量を気にしないと本当に後書きとかやたら長く書いちゃうんですよね、私……。悪い癖です。
誰の墓だとか突っ込まないで下さい。私自身名前なんか決めてません。
実はー……ある日4主がどうやってラズリルまで来たか、という話がぽこっと出まして。オベルの王子様の場合、ラプソでの航海日数を見てもかなり離れてるんで普通死ぬだろ、と。
兄「板切れビート板代わりにして根性で泳いできた」
私「いや、普通に考えてありえないから。幾つだと思ってんだよ」
兄「まあ完璧ギャグだけど。じゃあオベルの兵士が庇って一緒に流された」
私「それだあああっ!!」
……とまあ、こんな会話が。
私、楊家将読んでから武人大好きです。それ以前でも1のアイン・ジードとか2のキバ将軍とか大好き。
ちょっとこんな……武人の鑑みたいな兵士格好良すぎじゃないですか!
というわけで、ドツボにハマってネタ作成。カイル君において設定採用。グッジョブ兄君。
日付も年号はともかく、年齢共々でっち上げ。ラズリルに着いた段階で服もボロボロで出身がわからなかったんじゃないかな、と。
結局その人のお墓を通して名前も知らないかつての自分との決別、みたいな話になってしまいました。無論、それを引きずってるのはカイル君に限らず4主自体にありえなさそうですが。公式で「自分」ってものがしっかり出来てそうですしね。カイル君微妙ですが。
王妃様に関しては今までの紋章に食われた人と違うので(団長もですが結末が完全に違うので)それなりに気に留めてほしいな、という願望です。オベル王家女性の正装って4主は見てないはずですから、リノさんに言われるまでは知らないのではないか、という設定にしてます。そしてやたら思わせぶりなリノさんのあの話。さすがに気にするだろうと。
この設定だとその両方に確実な答えを出せるのはお亡くなりになったこの人だけなんですよね。それでせめて出身地でも書いてはいないかと見に来た、というところでしょうか。カイル君主体にすると説明不足な感がどうしても拭えない……。
後はラプソでのカイル君の設定が出ちゃってますね。ラプソでの加入レベルにコンバートデータが反映されない補足みたいな感じです。本気で戦わないのではなく本気が出せない、ということで。まあ、コンバートデータが反映されたら凄いことになってしまうのですがね。
……量を気にしないと本当に後書きとかやたら長く書いちゃうんですよね、私……。悪い癖です。
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